飯田 Jennifer 桃子、松本望睦 |「アンルーリー|Unruly 」について
飯田Jennifer桃子さんと松本望睦さんの「アンルーリー|Unruly 」展を観に、タリオンギャラリーへ行ってきました。女子美での授業の帰りで、嵐のような風と雨の中でした。
ドシャブリのズブヌレで、ギャラリーにたどり着いたのですが、地下ということもあるのか、展示空間は穴蔵のようにしんと佇まいでした。もちろん、間断なく、音の作品がなっているわけですが。
まるで洞窟の入り口で、風の音に耳をかたむけているような、ぼうぼうという音が、床の片隅に無造作に置かれた菓子の袋からは、女性のうたうような声がします。それらが響いています。
他の鑑賞者もいなかったこともあり、室内を歩き回り、いろんなところに立ったりしゃがんだり、雨宿りでもあるまいに、長いあいだ離れ難いものがあり、絵と音楽を観ていました。
飯田さんの絵のなにかを、その小さいな声をききたいとも想ったけれど、これは音楽がその一番手のような役割を、空間的に担っているのかもしれないと、問いとこたえが心の中で呼応しているような想いでした。
つまり、ぼくは、外界を感じていました。
ホワイトキューブで、作品が持つ異質さと違和感を受け取りつつあるものの、絵と音の「声」の衝突は、日常の目に耳にしている何かと変わらないことをも示しているとのではないかと。
とけてながれているような地平を空からながめているような景色と、うねるようにひびいている風のなかで、どこか遠くではない、ここにあるものが心地よかったです。
外に出ると雨は止んでいて、陽射しの中を駅まで歩いていくのを、さっきの絵や音に対する感情がついてくるような、ひきずっているような、重力の感覚がありました。
飯田 Jennifer 桃子、松本望睦 「アンルーリー|Unruly 」 2017年5月27日(土)〜6月25日(日) Talion Gallery 東京都豊島区目白2-2-1 B1F T / F: 03-5927-9858 email: info@taliongallery.com 開廊時間:水〜日 11:00-19:00 定休日:月、火、祝日 JR山手線目白駅より徒歩6分 東京メトロ副都心線 雑司ヶ谷駅より徒歩2分
「私は常々、絵画は生き物であると考えている。私は偶然性をコントロールし必然にする作業を行っている。その制作過程において平置きにしたキャンバスに、多量のオイルに溶かした油絵の具を流すものがある。絵の具はゆるやかに流動し、落ち着くところに落ち着く。その動きは偶然性の高いものである。そこで私はあらかじめ具体的な形、モチーフを予見し、偶然の美しい形を壊さぬよう積み重ね、それに近づけていく作業をする。私は、生き物としての絵画を、絵の具の何かになろうとする力を見つめ、重力と時間経過による成長によって表現している。」
「飯田Jennifer桃子は、油彩のレイヤーを流動・積層させる独特な手法に取り組むペインターです。平置きにしたキャンバスの上に液体状の油絵具を注ぎ、流動させながらイメージを固着させ、何層も重ねていきます。流体としての絵具は、作家によって慎重にコントロールされながらも、その意図を離れて重力に従い、一度定着した絵具の色合いや形象も、有機体のように変化していく。そこには、作家の何かを描こうとする意志に対抗する、偶然性と複層的な時間が存在します。 松本望睦は、サウンドデザインやトラックメイカーとしての仕事を手がけながら、ナイル・ケティングとのキュレーションユニットEBM(T)の活動でも知られ、「東京アートミーティング VI”TOKYO”ー見えない都市を見せる」(東京都現代美術館)のキュレーションに最年少で参加するなど、多様な活動を展開しています。作品制作の上では、音の中でもとりわけ声、それが発 される母体を探ることをテーマとし、社会環境の変化に適応しないための能力を「積極的な退化」と呼んで顕在化させます。 「アンルーリー|Unruly 」とは、「手に負えない、規則に従わない」などを意味しますが、ここでは主に、消えた島や隠れた砂漠、所在不明の都市など、いまだ明らかにならない地理上の場所を指す「Unruly Places」から着想を得ています。空間という抽象的で、合理化された概念に対して、空想的な逸話とされ、そこは無かったとされてしまうような場所として、本展覧会は提示されます。ぜひご期待ください。」