浜口陽三、奥村綱雄、Nerhol、水戸部七絵|「千一億年トンネル」展について
水戸部七絵さんが出展されている、「千一億光年トンネル」展を観に、ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションへ行ってきました。半蔵門線の水天宮駅で降りて、あと一時間で閉館というところで入って、ゆっくり観ることができました。1階は、浜口陽三さんの珠玉の版画が落ち着いた室内で鑑賞することができて、作家の佇まいが残り香が感じられるような静謐な空間でした。その階下へ、味のある鉄の螺旋階段を降りていくと、図書館の地下閲覧室のように、緊張感のある展示空間がありました。
一つ部屋に、観るということの後先がこだまして返ってきているような、あるいは見えない縫い糸で作品がつなぎあっている、そんな印象が広がっていました。水戸部さんの絵は盛り上がり、堆積し、うねり…そういう言葉らを通り過ぎたあとで、もしかして「これは山だ」と想っていました。山というのは、その圧倒的な堆積物や断面である地層をボーリングしていくという地質学的に知っていることよりも、山を眺めるとき、覆い尽くすように樹々が風でざわめくようにゆらいでいる衣または体毛をみたり、山に居るとき、斜面を踏みしめている感覚、山という表層に浮かびがあるような「圧力」を感じていることを想っていました。水戸部さんの表現は、そのような山肌との親和性、内蔵的な感覚に満ちているのではないかと。脳によって得られた知覚と、心によってくりかえされる感覚で、観るということについて、まなざしそのものが幾度も沸き上がっている姿のように想うのでした。
そして、同質のまなざしを感じる、奥村綱雄さんの刺繍作品、Nerholさんの像を刻む立体作品と、一つの円環を成して、幾度も廻っていくようです。
その光景を写して持ち帰るなど及びもつかないことですが、いま観たその眺めを再生しようと、何回も写してしまいました。とてもいい展覧会でした。8月6日まで、ぜひ☆ https://www.yamasa.com/musee/exhibitions/20170520-0806/
「…水戸部七絵(みとべななえ)は、顔をテーマに描くスケールの大きな最近注目の若手作家です。油彩絵具を時には一日100 本以上を使って豪快に塗り重ね、崩れることも臆さずに匿名の顔を描きあげます。絵画として描いていますが、作品は立体さながらに盛り上がり、大胆な色彩と質感で迫ってきます。 手のひらから時空を乗り越えて別次元へと昇華した作品の数々をご覧下さい。新作を含む現代作家の作品と、浜口の銅版画作品 20 数点の構成です。」
千一億光年トンネル 奥村綱雄、Nerhol、水戸部七絵 2017年5月20日(土)~ 8月6日(日) ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション 東京都中央区日本橋蛎殻1-35-7 tel. 03-3665-0251 半蔵門線 水天宮前駅 3番出口 徒歩1分 日比谷線 人形町駅 A2出口 徒歩8分 浅草線 人形町駅 A5出口 徒歩10分