top of page

藤田龍平|絵がない壁。色のない形。残らない線。絵画の条件。


藤田龍平さんは、西原尚さんの市原湖畔美術館多目的室での個展「IAW3|西原尚|フューチャーヒューマン」での最終日のパフォーマンスのゲストアーティストです。

その藤田龍平さんの個展「絵がない壁。色のない形。残らない線。絵画の条件。」へ、art studio & art space KOMAGOME1-14 cas (TOKYO STUDIO)にいきました。

もう、展覧会のテキストに語られていることが、その場に在る。

空間に走る線が、空間を溝のように隔てている。これは、巨視的な目線で眺めているのだけれど、溝の中をに走るようで、そびえる山脈の連なりの尾根をゆくようでもあり。

ぼくを含め、だれかの雰囲気が次第に残って浮かび上がっていく空間。

藤田さんの何日間かの行為の軌跡を、いま、観ていることを、カメラに写るかどうかはわからなかったが、もう一度、レンズ越しに追いかけてみる。

縁側と呼んだ窓の開口部に腰をかけて、藤田さんがいうように、絵という空間を眺めながら、いろんな話ができて好い。

絵画の中に飛び込んで沈んでゆく視線、それに呼応して反射するように交わされるまなざし。

絵かきとしては、やはりそういう、空間の経験を絵の中に観えたらつくれたら好いなと願う。

例えば、ゴッホの絵を見て感銘を受けたとしよう。 その絵は私の所有物ではなく人の物である。 では私が受けた感銘は誰の物であるか、

その絵の所有者の物であるか、あるまい。 ゴッホの絵は無形の感銘を運ぶ種であり風であり花である。 私の体もそれを運ぶ種であり風であり花であれば喜ばしい。 その全てにはなれないかもしれないがそのどれかであろうとすることが大事である。 造る者も、見る者も、そのどれかである。

今日の私は種であるか風であるか花であるか。 あなたは如何か。

(藤田龍平)

絵がない壁。 色のない形。 残らない線。

絵画の条件。

会期:2017年9月2日(土)~9月18日(月・祝)

開場:木金土日、休み:月火水(18日除く) 開場時間:13:00-19:00

art studio & art space KOMAGOME1-14 cas (TOKYO STUDIO)

絵画とは何か、アートはどうあるべきか ― この本質的な問いを巡り実験的な実践を行うアーティスト・藤田龍平の個展 『 絵がない壁。色のない形。残らない線。絵画の条件。』 をKOMAGOME1-14casにて開催いたします。

藤田は、絵画の内容や形式ではなく、描くという行為とその枠組に主軸をおき、「誰にでも描けるような線」を空間に描き連ねていきます。無数の線に描き出された場は、藤田自身の制作であると同時に、他の誰かがそこに残像のように想い描くイメージのための枠組であり、その枠組のひとつの実演でもあるという重層的な環境となっています。これは制作の主体としての作者である自分自身に作品を手放させ、そこに体験の主体としての個々の鑑賞者を深く関与させようとする試みであり、このふたつを結ぶ線の運動は、固有の作品から個々の体験へ、一人の作者から全ての人へと、絵画の在処を受け渡すための回路といえるでしょう。

こうした藤田の試みの背景には、「描く」ことの本来的な自由とその歴史的な困難という破綻が見出せます。人類にとって「描く」という行為は、ラスコーの洞窟絵画から決して途絶えることなく、今も世界中で同じように、あるいは様々な形で、理由もなく、自由に、繰り返されています。対して、西洋近代を中心に世界的に展開した美術史は、内容と形式の刷新の果てに絵画の終焉が宣言されるほどに成熟しました。先細りする進歩史観の突端で、絵画からは前衛としての推進力が枯渇し、各々の時代に「描く」ことを支えていた絵画論の自明性も失効しています。しかし、その歴史をなおも引き受けた現代の美術において、「描く」ことは、その本来的な自由に反して、根深い必然性の喪失を抱えています。画家として出発した藤田もまた、この歴史的な不自由さの中で「描く」ことの必然性を模索するまま何も描けない日々を重ね、自分が偽りなく描くことを始めるための枠組の探求を続けていました。

あるとき、藤田は地面という枠組を発見します。固定された方向と境界を持たない地表は作品の自律性を揺るがし、作者であり鑑賞者でもある両義的な行為者として描くことを藤田に許しました。垂直の視界を水平に傾け、画材と地表の摩擦という基底的な物質関係に身体を挿入し、文様のような描線を繰り返しながら空間を移動し、その差異と反復を場に蓄積させていく藤田の初期作品は、子供の落書きのような原初性への意識的な接近により「描く」ことの偽りなき自由を取り返しています。また、この着想は原初的な衝動への回帰には留まらず、アートの歴史・制度への批判的な視点を備えつつ、より多様な素材や空間を用いた様々な枠組の実験へと発展します。誰にも属さないことで他人の身体感覚へ入り込む単純な線の運動は時として藤田自身の手すら離れて風に踊る吹き流しのリボンにもなり、地面の水平性は空間を自在に結びつける立体的で多角的な連続面へと転換されていきます。

藤田の三度目の個展となる本展は、不定形性と無主体性の絵画というべき藤田の実践をさらに追求し、絵がない壁や、色のない形や、残らない線を、絵画というアートのひとつの本質的なあり方として提示する実験の場となります。同時に、素材や空間や構成や制度といった絵画史が取り組んできた様々な条件を、固定された条件の束としての理論から解体し、それらをアートの根源的なエネルギーを可能にする枠組としての絵画へと再び編み上げる試みでもあります。絵画とは、アートとは、展示空間とは何か、そして、誰のものなのか ― そのような問いの場として、そのひとつの答えとして、展示をお楽しみいただければ幸いです。

藤田龍平 絵描くことを軸に美術を探求しています。 https://www.ryuhei-fujita.net/


特集記事
最新記事
アーカイブ
タグから検索
ソーシャルメディア
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square
bottom of page