水戸部七絵|美術手帳NEWS / EXHIBITION - 2018.3.11 コレクター・高橋龍太郎が初の全面キュレーション。「顔と抽象」展に見る「自意識のスペクトル」とは?
日本を代表するアートコレクターとして知られる精神科医・高橋龍太郎が、初の全面キュレーションを手がける展覧会「高橋コレクション|顔と抽象−清春白樺美術館コレクションとともに」が山梨県の清春芸術村で3月18日より開催される。
「高橋コレクション|顔と抽象−清春白樺美術館コレクションとともに」は、コレクター・高橋龍太郎がこれまでに収集してきた2800点以上にもおよぶ作品の中から、「顔と抽象」をコンセプトに高橋自身がキュレーション。現代美術55作家69作品と、清春芸術村が所蔵している日本の洋画・近代美術の16作家39作品、合わせて71作家108作品を、清春芸術村内の清春白樺美術館、光の美術館、梅原龍三郎アトリエにおいて同時に展示する。
本展は、高橋コレクションの原点である草間彌生にはじまり、村上隆、奈良美智、会田誠、森村泰昌、荒木経惟など、これまで高橋が集めた日本を代表するアーティストの作品と、清春芸術村の所蔵作品とが織りなすダイナミックな展示構成となる。この時代を超えた構成について、高橋は「『現代美術』と『近代美術』、あるいは『団体展の作家』が本当に断絶しているのか、という疑問がありました」と話す。「清春白樺美術館で近代の絵画を見たとき、これを現代美術と比較するチャンスだと思ったんです。近代と現代をごちゃ混ぜにして並べることで、その断絶が本当なのかを検証したかった。この狭い日本の中で、それら互いが互いのエネルギーを利用しないのはもったいないと思うんです」。
「顔と抽象」というテーマは、一見すると結びつきが想像しにくいが、ここには「自意識と自意識の解体」が主題として潜んでいると高橋は語る。「いわゆる現代絵画は、自意識が変化してきた結果でもあります。近代の画家たちは、自身の苦悩(自意識)を自画像などで表現してきましたが、現代はこの自意識が解体されている。例えば、清川あさみは糸で顔をつくり出しますが、それも一定ではなく、見る角度によって異なる表情を見せる。『状況』から自意識を見せているんですね」。
高橋はこの「自意識の解体」こそが「抽象」へのプロセスだという。「現代絵画では自意識がなくなり、美意識だけが抽出される。そこではかたちや色、質感といったそのままが純粋なかたちで表出される、つまり抽象画です。抽象画を、自意識を消し去ろうとする試みだとすれば、自意識の強さをスペクトル(連続体)として並べて、絵画の歴史を切り取ることができます」。
自意識が如実に表出されていた近代絵画から、自意識が解体された現代絵画、そしてその自意識がなくなった抽象画、というスペクトル。本展は、長年にわたりコレクションを築いてきた、高橋独自の視点に触れる機会となる。
なお、会期中には高橋と現代美術家の会田誠、ミュージシャンの藤巻亮太による対談も行われるのであわせてこちらもチェックしてほしい。
高橋コレクション|顔と抽象−清春白樺美術館コレクションとともに
会期:2018年3月18日〜5月6日 会場:清春芸術村 住所:山梨県北杜市長坂町中丸2072(清春白樺美術館) 電話番号:0551-32-4865(清春白樺美術館) 開館時間:10:00〜17:00 ※入館は閉館の30分前まで 料金:入村料として 一般1500円 / 大高生 1000円 / 小・中学生入館無料 出品作家:会田誠、青山悟、赤塚祐二、淺井裕介、荒木経惟、有島生馬、衣川明子、伊勢周平、磯邉一郎、梅津庸一、梅原龍三郎、岡﨑乾二郎、落合多武、ob、風間サチコ、加藤泉、河野通勢、岸田劉生、清川あさみ、草間彌生、小出ナオキ、興梠優護、児島喜久雄、小西紀行、小林正人、小林孝亘、合田佐和子、近藤亜樹、齊藤彩、佐藤姿子、佐藤允、里見弴、塩田千春、志賀直哉、ジャン・コクトー、ジョルジュ・ルオー、菅井汲、杉本健吉、鈴木金平、高橋大輔、橋爪彩、鷲見麿、田口和奈、辰野登恵子、戸田沙也加、富田直樹、堂本右美、中川一政、中野浩二 、中村一美、長與善郎、奈良美智、バーナード・リーチ、原田健司、彦坂尚嘉、藤原裕策、舟越桂、町田久美、松井えり菜、水戸部七絵、武者小路実篤、村上隆、森村泰昌、森山大道、安田靫彦、山口はるみ、山田正亮、横尾忠則、李禹煥、若山為三、脇田玲
トークイベント
日時:2018年4月8日 登壇者:会田誠、高橋龍太郎 日時:2018年4月15日 登壇者:藤巻亮太、高橋龍太郎 日時:4月22日 登壇者:安倍昭恵、高橋龍太郎